昨日記事にした、J系エンジンで交換したカムチェーンです。
https://www.pams-japan.com/diary/?p=32267
さて、カムチェーンの伸びと言ってもチェーンのプレート自体が伸びる事はほぼ無く、構成しているピンやそれが当たっているプレートの穴部分が摩耗する事で全体長さの伸展は起こります。

拡大するとわかるのですが、プレートの断面が当たっているピン軸と、プレートの穴側も磨かれた様になって摩耗している事がわかります。

さて、交換したカムチェーンがどの程度伸びているか、カットしたのみの新品を並べて比較してみます。

Z1000J,Z1000R~Z1100R,GPz1100で使用されているサイレントタイプカムチェーンは152LINKありますが、この個体はざっと見てカムスプロケットの山がおおよそ1.6~1.7個分ずれる程度迄伸びていました。
これは並べての中央部よりやや前方。位置的にはエキゾースト側のカムスプロケットのあたりです。
ここでのずれ方は約0.8山分。

さて、新品時から0.8山分カムチェーンが伸びると、どの程度バルブタイミングが変わるかです。

J系に使用されるカムスプロケットは42T。これがクランク2回転で1回転します。
従って、0.8Tは360×2÷42×0.8≒13.7 クランク角で14度弱、新品時からバルブタイミングは遅れている事に。エンジンの回転方向から後に来るインテーク側は更に大きくなります。
バルブタイミングの遅れで何が起こるかと言えば、吸入効率に違いが出ます。
ちなみに、弊社のカムシャフトを設計製作する際、様々なZ系J系エンジンを使用してバルブタイミングを少しずつ変更しながらシャーシダイナモを使い数々のデータを採りましたが、バルブタイミングを理想値からあえて2度ずつ遅らせる事でダイナモカーブに明らかな違いが見られました。
あるエンジンのケースでは、最大トルクに明らかな低下が出ています。

日々乗っている車両が徐々に変わってもストリート走行でその差を感じるかは微妙かも知れませんが、一般に5度も変われば大抵のライダーが変化があった事を感じるレベルですから、14度の遅れが如何に大きいかです。
ピストンやリング回りに大きな摩耗が無くとも、パワー特性や最高出力が変化してしまうのはチェーンの伸びによるバルブタイミング遅れも大きな要因の一つでしょう。
特にハイカムと呼ばれるものを組んでいる場合はその傾向は大きくなりますので、チェーンの伸びにも対応して、タイミングを調整出来るタイプのカムスプロケットを使用するのが通常です。

ちなみに、新品交換後にある程度走ると各プレートの穴とピンの馴染みが起こる事で初期伸びが発生するのはドライブチェーンと同じですので、エンジン組み立て時に調整したバルブタイミングはある程度走行すると全体的に僅かに遅れます。
バルブタイミングを正確に調整する必要のあるレーサーやハイチューニング車の場合、チューナーによってはそれを見越してセットアップしたり、チェーンの馴染みが出たと思われる時点で再度チェックや調整を行ったりします。