JMC L6 HEAD (鋳造編)

前回の「砂型製作編」に続きます。


溶解炉です。アルミのインゴットをこの炉で溶かし鋳造に備えます。使用されるのはシリンダーヘッド等では高強度素材となるAC4CHというアルミ合金です。フラックスと呼ばれるパウダー状のケミカルを添加撹拌し、不純物、酸化物等を分離します。

溶融したアルミ合金に各種金属を添加し、鋳造に必要な状態へ整えてゆきます。これだけでも長時間の作業を要しています。湯を撹拌し酸化物等を丁寧に掬いながら除去していますが、この工程を手作業にて終えた後、最後に専用ミキサーで撹拌を繰り返しアルゴンガスを吹き込みながらバブリングという作業で、鋳造後に鋳巣の原因となる湯に含まれた水素ガスを抜いてゆきます。


先ず添加されるのはマグネシウム。0.4%~0.45%濃度を狙って投入されますが、鋳造後の熱処理時に硬度や強度を向上させる為のものです。途中、湯のサンプルをすくい挙げては、何度も分析器に掛けて状態を確認します。

更にストロンチウム、チタンボロン等も添加する事で結晶を細分化し、機能上問題となる様な鋳巣の発生を抑えます。非常に手間暇も体力も使う作業ですが、この工程如何で鋳物の品質に大きな違いが出るわけです。

鋳造方法は一般的な重力ではなく、圧力を掛けながら砂型に湯を送り込んでゆく低圧鋳造です。湯の温度や鋳造時の圧力等はすべて自動制御にてコントロールされています。

予め用意した砂型を組み立て、そこに砂型3Dプリンターで出力した1ピース中子をセットします。1ピース構造ですので、組み立て時の型ズレによるウォータージャケットの形成不全等の不良が発生せす、またポートの壁厚も設計値通り均一な鋳造形成が可能となります。

一基の溶解炉で二機のL6ヘッドが鋳造されます。炉に掛けられた圧力により、上部にセットされた砂型へと湯が行き渡り鋳造されます。

次回は砂型を割り鋳造された鋳物を取り出す崩壊作業のご紹介へと続きます。