理想とするL型チューンドヘッドを現代の最新技術で造ろう。
2021年初頭、突然そんな企画はスタートしました。



約50年間に渡り国内外で愛し続けられているL型6気筒エンジン。今日に至るその長い歴史の中では、先人達が残した知恵の結晶とも言える素晴らしいチューニングメニューが数多く存在します。

ターンフロー&2バルブという旧態前としたノーマルL6は、非力でスポーツカーには相応しいと言えないエンジンですが、ひとたびチューニングのメスが入ると、リッター当たり100~120PS以上を叩き出す別物エンジンへと変貌するポテンシャルを秘めています。



ただし究極のL型メカチューンを遂行する為には幾つかのハードルを越えなければなりませんでした。その中で私達が最も問題視したのは、燃焼室にアルゴン溶接を盛った後に整形というパートと極限まで容量を拡大したポート研磨、この二つと言って良いと思います。



それらは燃焼室へのアルゴン溶接盛りによるヘッド本体の熱歪、ポート研磨拡大加工時におけるウォータージャケットへの貫通トラブルと言ったリスクを抱え、又その加工を完結出来るチューナーも数少なく、完成までに年単位での長期間を要するという問題もありました。



またコンディションの優れたN42ヘッドも年々その数が減少した事で貴重な物となり、ベースヘッドの確保が困難になって来た事もチューニングへのハードルを上げた一因です。



ならば最初から理想とする燃焼室形状と容積で、更に理想とするポート径と形状を実現しつつも、十分なポート壁マージンを持たせ冷却の為のウォータージャケットも最適化したい。そんなヘッドを一から新規で設計そして製作出来たのなら上記の様な憂鬱から解放されるのではないだろうか?



そんな夢物語とも言える妄想は、Lヘッドプロジェクトメンバーの集結前までは絵に描いた餅でしかなかったのです。



ここでは、プロジェクトの発足からヘッド完成までの基軸を簡単にご紹介しつつ、皆様にもこの壮大の妄想が形となる様に暖かく見守って頂けますと幸いです。