写真はZのタペット。バルブリフターとも呼びますが、インナーシム用とアウターシム用のどちらも現在でも新品パーツとして買えるものです。
さて、このタペットの上面についてはマニュアルにも記載はありませんし、通常エンジンを組むのにはさほど必要な知識では無いので、あまり知られてはいませんが、少なくともZ用のものは完全に平面ではありません。
これはインナーシム用のタペット。
インナーシムの場合は、カム山が直接上面を擦る構造です。
平面で無いとは言っても、ノギスレベルでは測定できるレベルではありませんので、どの程度か見易い様に光を使ってみましょう。
横方向から光を当て、この様にストレートエッジを当ててやるとよりわかり易いです。
センター部分が当たって、その左右から光が漏れているのがわかるでしょうか?
寸法的には1/100~2/100程度中心が高くなっています。極薄のシックネスゲージか、薄紙を置いて引っ張ると抜ける程度の隙間です。
さてアウターシムのタペットはどうでしょうか?
構造上上面の外周は、大きなアウターシムを保持する為にリブが立っていて直接上面にストレートエッジを当てる事が出来ませんので、程度の良い取り外し品のリブ部分をカットしないと見れません。
既にセンター部分の当たりがある事自体が結果を予感させますが。
同様に光を当てながらストレートエッジを当てると
やはり中心部が僅かに出ているのがわかります。
ちなみに、もしもこの上面が完全に平面だったとすると、運転後のエンジンではアウターシムは強烈に貼り付いてしまいますので、シム調整時にも容易には剥がれ無くなります。
僅かに1/100~2/100程度の高さの違いですので、5/100単位でのバルブクリアランス調整でも影響の出るものではありませんし、カムリフトやバルブタイミングでも同様ですが、何故この様にセンターが出ているかと、昔、リフターを製造するメーカーの人に聞いた事があります。
その際中心が僅かに突出している事でタペットがヘッドのホールの中で回転し易くなり、均一に摩耗する様になっているのですよと説明されました。
製造時に上面の公差が出ても、必ず中心が高くなる様に作るのだとも。
又、エンジンによっては、カム山の幅中心がカムのセンターから少しずらされている事で、やはりリフターを回転させる様になっているものがあります。
さて、たまにZ系のエンジンをチューニングした際に、このタペットを交換しないで磨く事でフリクションを減らそうとする方法があります。
手法としては間違ったものでは無いですし、子傷やオイルの焼けは気になりますので、横方向を磨くのはもちろん良いのですが、上面に関しては以上の理由からあくまで軽くに留めた方が良いでしょう。
良かれと思って磨き過ぎると、むしろタペットの回転が悪くなり、編摩耗の原因になる可能性があります。
又、タペットを新品にした場合、現在メーカーが販売しているものは最初から表面にオイルの保持を向上させる為の処理が施されていますので、バリやエッジの確認や処理以上の研磨は行わない方がむしろ動的な潤滑やフリクション面では有利です。
例として、下の写真は新品に交換してある程度の距離を走ったタペット。
摩耗と言うより丁度あたりの付いた状態です。
リフターはカムに押されて上下する際に、クリアランス分首を振りながら下がりますが、面圧の弱いセンター部は油膜に保護されて擦れも生じていません。