いつものように店のシャッターを開けるとフロント廻りがひどく損傷した見覚えのないZがとまっていた。どう見ても自走出来る状態ではないし、見回す限りオーナーの姿もない・・・。スタッフ全員で首をかしげた挙げ句悩みに悩んだが誰も思い当たる節がない。開店後数十分してオーナーから電話が入った。話を聞いたところ事故にあいレッカーにて引き取ってもらったが、時間帯が明け方だった為そのまま店の前に置いていってしまったとの事だった。早速、外装類をはがし修理に取りかかった。しかし、タンクを外しその下にあるフレームを目にした時、様々な修理を経験している我々でも少し不安になるぐらいの損傷を受けていた。オーナーともはなしあったがどうしてもこのバイクを直して乗りたいとの強い要望があり、そのリクエストに応えるごとく作業を進めた。
●一目で分かる程フロント廻りは大きなダメージを受けている。ここまでのダメージがある場合まず間違いなくフレームにも影響は出ている。
●2番,3番エキマニ間にまでめり込んだFホイル。Fフォークの曲がりもハッキリと分かる。 ●くちゃくちゃに折れ曲がったフェンダー。ファクトリー内で移動するのも一苦労。
●Fホイルめり込み、反対側からのカット。 ●前からのカット。Fフェンダー、Fフォーク等のダメージが衝撃の大きさを語る。
●ものの見事に曲がってしまった鉄リム。さすがに修正出来る範囲ではない。
●ネック下ガセット部のアップ。 ●フロント側から真直ぐに大きな衝撃を受けたフレームは見ての通り思いきり猫背状態に。
●ガセットからアンダークレードルにかけてくの字型に大きく変型してしまっている。ヘッドカバーとのクリアランスを見て欲しい。

ここまで見ると(このZ本当に直るの?)と思った方もいらっしゃると思います・・・が、我々が直すと言ったら何が何でも直すんです!!!
●フレーム修正機上にセットし、バーナーであぶりながらゆっくりと時間をかけ元の寸法まで戻していきます。当然ダメージは首廻りだけではなく、縦振り横振りとフレーム全体に歪みが発生しているので、各部の寸法を何回にも分け計りながら作業を進める。 ●ネック部の寸法がほぼ戻った状態。
●大きく横振れも発生していたヘッドパイプ部も真直ぐに。 ●くしゃくしゃになっていたガセット部も新規に造り直した。
●今回あまりにも修正幅が大きかった為ネック部の剛性低下を嫌い念のため補強を追加した。 ●見ての通り綺麗に復元されたZ2。オーナーも作業を任せてくれたものの、この状態を見るまでは「ほんとに直るの?」と不安だったらしい。フレーム修正(復元と言ったほうが正しいかも知れない)と同時にフロントフォーク各部ベアリング交換等が行われた結果、事故以前よりも健康体に復活した。再度オーナーの手に渡され走り去る後ろ姿を見守りながら今後の安全を祈った。