ほぼフルオリジナル状態を保った初期型750RS。今回は安心して乗って行けるような機能面重視で整備メニューを組んでみました。オーナーが最も懸念していたのがスムーズに吹けなくアイドリングも安定しないエンジンの状態。それから直進状態において左へ左へと勝手にバイクが寄って行くこと、左右でのコーナリング特性に大きな違いがあるということでした。まずは試乗してみると確かにその症状が明らかに確認され、エンジンコンディションのチェックから作業は始まりました。
●圧縮圧力及びリークダウンチェックにより異常な値が4気筒共に確認されたことによって既に腰上が降ろされた状態。
●フレームセンターにも大きく狂いが発生していたため、フレーム修正を施し同時に曲がっていたウィンカーステー等も元通りに修復した。 ●STDタイプのステムベアリング。既にレース部分に明確な打痕が発生しスムーズなステアリングの動きを阻害してしまうような状態だった。
●ここは迷わず耐久性もふまえニードルテーパータイプのステムベアリングに交換。
●消耗の激しかったホイルベアリングも交換。こちらはフロントホイル。
●スピードメータードライブギアケース内部。劣化していたグリスを奇麗に書き出して洗浄。この後、新しいグリスが入れられます。
●同じくこちらはピックアップギア。ご覧のようにツメが折れ曲がっている状態でした。以前組付け時に合い口を確認しないまま締め付けてしまったのでしょう。勿論キチンと修正して使用します。
●こちらはリアホイル廻り。ホイルベアリング交換は勿論のこと、ハブダンパーも交換です。この辺りも乗り味に大きく影響する部分です。
●スイングアームピボットシャフト&ブッシュ。グリスが完全に切れてしまっている状態、本来スルスルと動くはずのブッシュは完全に固着した状態。これでは正常なスイングアームの動きは期待出来ない。
●PAMSオリジナルのピボットベアリングキットを組込む。STDではただのブッシュにて慴動していた物がニードルベアリングに置き換えられることによって圧倒的なフリクションの低減と耐久性を手に入れられるもの。長期間の使用を考慮しSTDと同じく両サイドにはダストシールが装着されます。
●今回組込むのは純正オーバーサイズピストン。0.50と言う刻印がはっきりと見えます。 ●こびり付いていたベースガスケットを剥がし奇麗に面出しも終了。実はこういった作業が最も大変だったりする。
●ピストンに組み付ける前にリングをライナー内に入れ合い口隙間の確認。
●精密ボーリング&ホーニングが施されたシリンダーライナー。今回はプラトーホーニング仕上げとした。ライナー抜けが発生していたためPAMSお得意のライナー外周メッキ処理を施し締め代を確保、シリンダーブロック下面も面研処理を施した。 ●リングの組付けられたピストンをコンロッドに装着。
●細心の注意を払いシリンダーをインストール。
●クランクケースと合体したシリンダーブロック。この状態でハンドクランキングし異常がないかを確認。面研されたシリンダーブロックデッキが美しい。
●アイドラーギア類も全て新品に交換。勿論純正を使用。 ●いきなりですがヘッドが搭載完了。
●これからシムが載せられます。メンテナンス性では圧倒的に優れるアウターシム。 ●STDカムシャフトを組込む。ジャーナル、カム山共に磨き上げてあります。
●SSTを使用しタペットクリアランスを調整。
●タペットクリアランス調整を完了させ、各部にオイルを注油し圧縮圧力及びリークダウンのチェックを行う。画像はリークダウンチェック風景。 ●ポート内は段付きも含めサラッと削ってみました。
●以前に開けられたことがあると思われ意外と奇麗な状態。この後完全に洗浄して組み付け。オイルパンはそこに残されたスラッジや残留物等によってエンジンの状態を知る手がかりにもなる。
●カムカバーが締められ、完全リビルトが施されたSTDキャブレターを装着。
●ハーネス類は全て新品に交換。レギュレーターもPAMSオリジナルMF対応タイプ。点火系はSPIIへと大幅にグレードアップ。
●引きずりのひどかったフロントキャリパーも分解Oh。腐食が多く見受けられたキャリパーピストンは硬質クロームメッキ処理にて完全再生。
●完成しオーナーを待つ750RS。エンジン塗装や外装等に年式相応の痛みは見て取れるがオーナーはこれも大切な味わいと受け止めている。見た目には一切大きな変化はないが今回はエンジンをはじめとしてフレームや足廻り、電装系までと機能面置いては満遍なく手が入れられた。見た目にいい感じのヤレ具合を残しながらも本来のパフォーマンスを十二分に取り戻した750RSを思いっきり楽しんでもらいたい。