●遠方から陸送にてドック入りとなったZ2。オーナーの仕事の都合により数年間乗られる事なく不動となってしまいました。
今回は不動になる以前から気にされていたエンジンからの異音と白煙を解消すべく腰上のオーバーホールを。
そして電装系、足回りと総体的に見直しを計るメニューとなりました。
●本来押し引き計2本のワイヤーにて作動する純正キャブですが、なぜか一本になっていました。このままでも走れてしまいますが状況によっては張り付き等スロットルの戻りが悪化する場合があります。
●今回エンジンは腰上のみのオーバーホールというメニュー。車載状態で腰上を分解していきます。
●シリンダーヘッドを降ろしたところ。燃焼室全体がカーボンの蓄積とともにねっとりとべたついた状態。白煙発生の元となったオイル侵入を物語っています。
●シリンダーブロック内のアイドラーギア。ご覧のように2ピースにばらけています。このような場合そのほとんどがシリンダー前側に位置するアイドラーによく見られる現象で、経年劣化というよりも適正なテンショナー調整がなされていない事により遊んだカムチェーンに叩き付けられることによりおこると考えられます。またスライダー等の破損も同様なことが言えると思います。
●ピストンヘッドを上方から見る。燃焼室と同様にやはりべっとりとしたカーボンデポジットが生成されています。画像にはございませんが各シリンダー壁に結構深い縦傷が走っています。これもオイル燃焼の原因の一つだったかもしれません。
●点検と清掃を兼ねてオイルパンを外します。スラッジに混ざり細かな金属粉と共に幾つかの金属片も発見されました。
●オイルパンからすくいあげて洗浄後の金属片。どう見てもピストンリングです。しかしピストンには全てリングは着いている状態であり、なぜオイルパンにこのような物が存在したのかが不可解だ。 ●こちらはオイルポンプストレーナーにへばりついた金属粉です。粒子の小さな物はこのストレーナーを通過しクリアランス管理のシビアなオイルポンプ内を痛めていく事になります。
●Pams対策FCバルブガイドに打ち換え、シートカットはおなじみ若干追い込み加工を施し、段付き無しのハイフローカットとしました。ポート形状やバルブ径等も効率向上には有効ですが、このシートカット形状も非常に重要で場合に寄ってはビッグバルブ以上にその効果を発揮します。
●カーボンの除去等入念に洗浄後、シリンダーヘッドの組付けに入ります。基本的に使用部品は全て純正部品ですが、若干ひねりは加えています。
●シリンダーヘッド面精度を上げるのと同時に、燃焼室ボリュームを計測した上で容積指定面研を行いバルブ追い込み加工に寄る燃焼室ボリューム増加分を補い、さらに若干の圧縮比アップを狙います。これらもファインチューンメニューの一つです。
●画像では分かりにくいと思いますがクランクアッパーケースデッキ面下側面に職権打刻のような跡があり、シリンダーブロックを外してみると、そのデッキ部分が若干隆起していたため時間をかけて面出しをしました。腰下までのオーバーホールであればスタッドボルトを抜いてのデッキ面研が有効です。
●今回使用するピストンは純正0.5mmオーバーサイズ。
●スライダーも純正部品です。しつこいようですが適正なカムチェーンテンションを保っているいた場合そう簡単に破損する部品ではありません。 ●コンロッドにピストンが組付けられました。
●シリンダーブロックをインストール。シリンダー壁のボーリング、ホーニング仕上げは耐久性とフリクションの低減を兼ね備えたプラトーフィニッシュとしています。シリンダーブロックデッキ面に気になるキズが数カ所ありましたのでそちらも一皮むいた修正面研が入っています。
●組付け済みのシリンダーヘッドを搭載します。
●カムホルダーボルト雌ねじに数カ所痛みが発見されたため、全16カ所に強化ヘリサート加工を施しました。新品純正カムメタルを使用し慎重にカムシャフトを組み付けていきます。
●組み上がったエンジンのタペット調整をしているところです。
●フロントフォークインナーチューブ。これも画像では分かりにくいのですがかなりひどい縦傷や腐食が発生しています。シールからのオイル漏れもありオーバーホールを施すことに。
●外したインナーチューブ自体に変形が見られたため今回はリクロームをせず、新品純正インナーチューブを使用する事にしました。
●ハーネス類の痛みもかなり進んでおり、また途中痛んだ箇所が間に合わせ的修理の跡もあり、今回は全てのハーネスの引き直し+SPIIというメニューで信頼性パフォーマンス共両立させようとものです。
●装着の完了したSPIIシステム。オリジナル点火マップを書き込んだPamsオリジナルバージョンです。
●スポーク、タイヤも張り替え足下も奇麗に。
●引きづり気味だったキャリパーは分解OH。ピストンにはかなりひどく腐食痕が発生しており、リクローム済みの再生品に交換。
●動きの渋かったスイングアームも、ピポット部のオーバーホール兼ベアリング化でスムースに。
●錆も発生し慴動抵抗の大きかったドライブチェーンも新品交換と同時に530化。減速比はSTDを基準にしてあります。
●完成したエンジンにも無事火が入り、当然白煙も異音もなく静々とアイドリングを奏で始めました。この後試乗を繰り返し納車までの準備を進めていきます。
●本来の調子を取り戻したZ2、これから陸送にてオーナーのお手元にお届けとなりますが思い切りかわいがってもらえることを願いスタッフ全員で見送りをしました。