今回、白煙等のエンジン不調やクランクケースのボルト折れ等でで再入庫し、以前からやろうと思っていたオーバーホールする事になったFX1。
過去にOH歴があるエンジンなので、細かくチェックしながら分解していく。
●外装等を取り外し、早速カムカバーを開け、カムホルダーボルトのトルクやバルタイ等の状態をチェックしながら分解。 ●カムシャフトまで取り外したところ。カムメタルの状態等も念入りにチェックする。こういったところの状態により正常に機能しているか否か等を判断する。
●ヘッドまで外れた状態。覗かせたのは0.5オーバーサイズピストン。ピストンヘッドは各気筒ウェットな状態。オイルが侵入し、燃焼していた事を物語る。
●テンショナーローラー&アイドラー。過去のOH後何キロ走行しているかは定かではないが、既にローラーは硬化し、アイドラーは痛んでいる状態。前回は交換しなかったのかな? ●スライダー側(前側)のアイドラー。中心の部分が外れてしまっていて左右に踊っていた痕跡が見れる。
●シリンダーまで外した状態。ピストンを見ると痛々しい縦傷が見られ、ピストンリング溝とリングのクリアランスも大きく広がっている。
●エンジンカバー廻りを取り外しながら、腰下を降ろす準備。
クラッチカバーを外すとSTDとは異なる光景。
●ドライブスプロケットを外すためカバーを開けると、ロックワッシャーなしでナットが締められているだけ...
工具をかけると案の定トルク不足。
大事故につながる可能性もあるのでここの管理はちゃんとしたい。
●ステーターコイルハーネスを押さえるステーが逆さまに取付けられていた為、ステーがギアに干渉し削れてしまっていた。
●腰下を分解し、洗浄、タッピングをしていくとご覧のように全てのボルト穴にシリコンがみっちり....
一度タップを通しただけではとりきれず、タップでシリコンをほぐしエアーで飛ばしてみたり、タップを何度も繰り返したりと大仕事...
●あたりがシリコンだらけ... ●ボルトが効かないところへシリコンを塗り差していただけの箇所。
ヘリサートでの修理を施した。
●痛んでいたギアも交換。
既に欠品となってしまっている部品はPAMSのストックから良品を選び組込む。
●クラッチプッシュロッドが挿入されるこんな小さな穴にも実はOリングが入っています。
●バスケット側はジェラルミンで、J系に使われるタイプ、ギア側はZ系のニードルベアリングを使うタイプのクラッチバスケットとなる。
バスケット側は鍛造アルミ製となる為軽量化に有効。
●センターチェック、洗浄の終了したクランクシャフトがアッパーケースに載せられる。 ●アッパー、ロアケースの間に挟まるOリング。これを忘れると油圧が抜けて大変な事になります。
●クランクシャフト、そしてリビルトの完了したトランスミッションが載せられる。キックシャフトは残したまま。
●クランクケースの締結が完了し、エンジンスタンド上で180度回転。
●面研されたアッパーデッキ面が美しく輝く。
新品の純正シリンダースタッドボルトを組み付ける。
●洗浄、入念なエアブローが終了しバルブの摺り合わせ作業に入る。当然ですが良いあたり出てます。
●バルブの挿入、そしてスプリング等の組付けに入る。
●WPC+MOS2ショットが施された純正OSピストン。慴動抵抗の低減、耐久性の向上等に有効。
合わせてカムメタルにも同様の処理を施す。
●チェーンスライダー装着。シリンダーブロックアッパーデッキ面も修正面研済。
●慎重にシリンダーブロックを組み付けてゆく。この状態でハンドクランキングにて妙なフリクション等が発生していないかをチェック。
●シリンダーヘッド搭載。ここまでくるとやっとエンジンらしい姿に。
●左上画像内、左側がZ系のもの、右がPAMSでJ系ハブ組込みの際に使用されるクラッチプッシャー。右上画像のパチンコ玉のようなものはJ系ハブ組み込みの際には使用しない事となる。
●メタルプレート、フリクションプレートの組み付け。当然J系部品が使用される。
●オペレーティングプレートの組み付け。J系はセンターにベアリングが圧入される。
●トランスミッションカバー内も全て組み付け、後はカバーを取付けるだけ。
●ワンウェイクラッチもリビルト済。
●傷がつかないようフレームに養生を施しエンジンを搭載。
●フレームにエンジンを搭載後オイルパンを装着。
●スピード、タコメーター共にリビルトを施す。同時に下振りスタイルにパネルデザインを変更。乗っている間は絶えず視界に入る部分だけにここが綺麗になるとイメージも変わる。
●キャブレター等の補器類も装着され火入れを行う。いつもながら静かなアイドリングが始まった。
●外装類も装着されやっと形になったFX1。
●インナーチューブを締め付けるトップブリッジのボルトが本来の長さではなかったり、ディスクローターを止めるボルトが抜け落ちていたりとちょっと心配な部分が散見された。良く見るとインナーローターのボルト穴が既に長穴加工?されている?
●ようやく完成へとこぎついたFX1。いつも一緒にご来店される彼女と仲良くタンデムライドにて引取となりました。静かに、そしてスムーズに回るエンジンを十分に堪能して頂きたい。