過去に何度か手を加えられてきたエンジンの不調を訴え、遠方から単体で持ち込まれたZ2エンジン。早速ばらしてみる事に...

●開けてみるとクランクはZ2のままボアを73φになっており、ピストンはピンハイトを加工したSOHC製のワンオフものが使用されており、オーナーの希望でそのピストンをキャリーオーバーとした内容でリフレッシュメニューをたてた。
●燃焼室を見てみると各気筒オイルが燃えていたような跡。
バルブガイド廻りにもガタが見られたため打ち変える事に。
●カム山のあたりかたが不自然なためよく見てみる。
リフター(インシム)の頭頂部を見るとすり鉢上に摩耗してしまっている事が分かる。ここは迷わず新品のリフターに交換決定。また、カムシャフト側にも変摩耗やカジリ跡が発生しているため悩むところだ....
●SOHC製73φ鋳造ピストン。ピストンピンサークリップ溝に全くあわないクリップが使用されていたり、本来目的の異なるトップリングとセコンドリングが共用化されていたりと正直なところ理解に苦しむ...
溝に適合したサークリップに交換したのは勿論の事リング溝幅に合わせ、トップ、セコンド、オイルリング共に専用のものへ交換した。
●クラッチハブダンパースプリングに痛みは見られたがその受け側の摩耗が割と少なかったためスプリング交換リビルトを施して再使用とした。
トランスミッションは全ての消耗部品交換及び痛んでいるギア本体も良品ストックから交換。
●センター出しの終了したクランク。位相ズレもなく、サイド、ラジアル方向共に適正なクリアランス内。
●クランクアッパーケースをスタンドにセット。最終的な点検とエアブロー等の清掃が行われる。
●アッパーケースにクランクをセット。 ●続いてリビルトの終了したトランスミッション及びクラッチハウジングがセットされる。
●クランクメインベリングセンターキャップを締めいよいよロアケースとの合体を待つ。
●ロアケースを仮締めし、トランスミッションの動作チェックを行う。 ●締結完了したクランクケース上下。
●純正新品のスタッドボルトに交換。面研の施されたケースデッキ面が美しい。
●キャリーオーバーとなったピストンだが、完全にカーボンも落とされ新品のような外観に。
●ピストンをセット。
●ILP処理済のシリンダースリーブ。スリーブも打ち替えられブロック側と共に適正な肉厚を持たせてある。
●シリンダーを挿入。異常なフリクション等が発生していないか確認。シリンダーブロック上下も最小面研が施されている。
●純正のアイドラーギア、テンショナー、センターOリングを使用。
●同じく面研が施されたシリンダーヘッド。こちらは最小値ではなく想定した圧縮比から計算された燃焼室容積指定面研。
●新品純正バルブスプリングシート。 ●元々カムノーズ逃げ加工が施されていたが今回使用するカムのスペックでは干渉の恐れがあり追い加工を施した。
●インテーク、エキゾースト共にフルポーティング作業を施す。単にボリュームを拡大するだけではなく全体のエンジンメニューからその内容も変化してゆく。
●ビッグバルブ化に伴いシートカット形状を変更。通称ハイフローシートカット。ポートだけではなくそこから繋がるバルブシートリング、シートカット形状等により同じバルブを使用しても吸排気効率が変わる。
●シリンダーヘッドのアッセンブリー作業。カムメタルはWPC+MOS2処理済。
●アッセンブリーの済んだヘッドを搭載。 ●新品リフターもWPC+MOS2処理済。慴動抵抗の低減、耐久性を狙う。
●エッジ処理を施したカムシャフト。 ●カムシャフト装着。アジャスタブルスプロケットによりこれからバルタイ微調整。
●消耗の見られたワンウェイクラッチ及びギアも新品に交換。
●セルモーターも分解清掃リビルト。
●オーナーが組んだ車体を持ち込んで頂き、エンジン搭載。
仕上がってるフレームに万が一にでも傷つけないよう養生をする。
●エンジンを完全にマウントし、GPZのオイルポンプ、オイルパンを装着する。
●圧縮等を確認し、カムカバーを装着。点火、キャブ等をつけて行く。
●火が入り実走行へ向け細かく調整をする。
●今回のエンジンは通常の経年劣化と言うものからのOH ではなく、既にチューニングが施されたエンジンを更に適正な状態にしつつ、耐久性を考慮した処理を施すものとなった。
コスメ的にもブラックエンジンにし、生まれ変わったエンジンを積んだZにまたがりPAMSを後にするオーナー。
遠方なので慣らしもすぐ終わってしまうと思いますが、慣らしを終え回すのが楽しみなエンジンだ。