エンジンからの異音がとても気になると来店したZ2。エンジン音を聞くため一瞬エンジンをかけるが驚くほどの異音にすぐにエンジンを停止した。チェックしてみるとびっくりするようなことに.....。

●マニュアルカムチェーンテンショナーが装着されていたが、目視でも簡単に分かるぐらいテンショナーロッドが押し込まれている状態だった。この状態でもハンドクランキングするとカムチェーンは張りきれていない。カムチェーンライン上に何か大きな異常がおきていると判断し、まずはヘッドカバーを開けることに...

するとあれ程締め上げられているテンショナー位置にも関わらずだらだらとほとんどテンションのかかっていないカムチェーンが目に入った。カムシャフトを外しアイドラーギアを覗くと恐ろしい光景があった。
●今回の異音とは直接関係ないと思われるが、バルブリフターホールに大きな補修跡があった。アルゴン溶接にて割れた部分が修復されているが、溶接熱による歪みが発生しているため、本来指で回すとくるくる動くはずのリフターがうまく回らない状態だ。以前、シムが外れ暴れ回ったためヘッドを割り外に飛び出したのではないだろうか。高回転で飛び出すと良く言われているが、一般公道で飛ばす程度ではまずあり得ない。それよりも、バルブガイドとバルブステムの過小なクリアランスや、また組み合わせる互いの材質が合わないために焼き付いてステムとガイドがロックし、本来の位置、タイミングでリフターが上がりきらず、その状態でカムに叩かれつづけシムが飛び出すといった可能性の方が高い。
●テンションのかかっていないカムチェーンに叩かれ続けた結果内部が削りとられてしまったヘッド。
●アイドラーギアは見事に分解されていた。 ●テンショナー。これではどんなにマニュアルテンショナーを締め込んでいってもテンションはかからないはずだ。カムチェーンが脱線した状態で組まれているにも関わらず無理にテンショナーを締めつけ走り続けたためテンショナー本体はアイドラー、テンショナーローラー、ボディともども磨耗を通り越しバラバラになってしまう寸前だった。
●ゴムローラーの片側のみが完全に削り取られ完全に消滅している。それを支えるシャフトまで削られバラバラになる寸前。これを見てもカムチェーンが脱線していた事は明白だ。 ●同じく脱線したカムチェーンが接触し、削り取られてしまったシリンダー内部。
●カムチェーンスライダーも破断しその役目を果たしていない。 ●脱線した状態で無理矢理テンションをかけられ、回され続けたためカムチェーン本体にもダメージが及び御覧の通り本来の褶動性は完全になくなっている。
●カムチェーンスライダーが破断しているため直接クランクケース内をカムチェーンが削りとっている。 ●カムチェーンスライダー下部を固定するきりかきがスライダー破断後カムチェーンとともに暴れたためスライダーをおおう樹脂がはがれ直接金属部分が接触しこのようにささくれてしまっている。このままでは正規の位置に再度スライダーを取り付ける事はできない。
●破断してオイルパン内に落ち込んでいたチェーンスライダー。見事なまでに粉砕されている。スライダーの周りにも細かな金属粉が見つかった。オイルパン内に殆どスラッジが無いことからもそう遠くない過去にエンジンがあけられている。

エンジンオーバーホール済みとのことで購入したZ2。購入後幾らも走らないうちに異音が増し不安になっての来店だった。あまりの酷さに購入後間も無いと言う事も考慮し、購入したお店に掛け合って修理依頼する事をすすめた。後日ばらされた状態で異常のあるポイントを説明しエンジンを引き取ってもらった。早く完調な状態のZに一日も早く乗れる事を願って止まない。